大判例

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東京高等裁判所 昭和40年(う)1269号 判決

被告人 坂井文隆

〔抄 録〕

所論は第三に被告人は判原決の認定するような本件拳銃、実包不法所持の実行行為者ではないと論ずる。銃砲刀剣類等所持取締法や火薬類取締法にいわゆる所持とは、所論もいうとおり、自分の支配し得べき状態に置くことをいうのであるが(最高判、昭和二三年九月二一日、集二巻一〇号一、二一三頁及び同判決引用の同年七月二九日大法廷判決、集二巻九号一、〇七六頁)、本件において被告人は前記の如く拳銃、実包を自宅(両親の家)に隠匿蔵置していたのである。所論は、被告人は両親の家に居住していたのではなく、拳銃等の保管場所は被告人の居室ではなく母が定めた場所であり、殊に原判示昭和三九年一〇月一六日には終日在宅していなかつたのであるから、被告人が支配し得べき状態にはなかつたと主張する。なるほど被告人は暴力団体住吉会の直井二郎の乾分となつていた関係から両親の家に寝泊りすることが事実上少い事情にあつたことは認められるが、当審証人坂井ミヨの供述によれば被告人が両親の家に出入りすることを妨げる何物もなく、もともと被告人専用の居室はなく、本件拳銃等の蔵置場所は被告人の当然知り得る事情にあつて、これを出し入れすることも自由にできる状態であつたことが認められる。本件の場合、右拳銃等が偶々居合せた母の手を経て蔵置場所から出し入れされただけのことであつて、所論の如く専ら母の支配圏内に置かれて被告人の自由な出し入れを許されない状態にあつたものでないことが明らかである。そして或る物が或る人の支配し得べき状態に在つたといい得るためには、その人がその物の所在場所に現在することを要するものでないことはいうまでもない。従つて本件拳銃及び実包は正に被告人の支配し得べき状態に置かれていたというべきであり、被告人をその不法所持の実行行為者と認定した原判決は洵に相当である。

(三宅 石田 寺内)

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